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理想を詰め込んだ「迷子のリスト」と現実のギャップ

「せっかく沖縄から東京へ引っ越すなら、絶対に妥協したくない!」
迫りくる新しい生活への期待と、見知らぬ大都会への少しの緊張感を胸に、私が最初に始めたのは理想の部屋の条件を書き出すことでした。
ノートを開き、思いつく限りの「良い条件」を次々と並べていく時間は、これから始まる東京ライフのすべてが約束されているかのように思えて、本当に楽しいひとときだったのを覚えています。
その時に完成した私の条件リストは、今振り返ればまさに個人の欲望を詰め込んだだけの「迷子のリスト」でした。
「バストイレ別なのは当たり前。毎日の通勤を考えて駅からは徒歩5分以内がいい。お風呂には絶対に追炊き機能が欲しくて、洗面台は独立しているお洒落なものがいいな。防犯面を考えて2階以上で、できれば築浅、日当たりが良くて洗濯物がよく乾く南向きの部屋。周辺の治安が良くて、近くに夜遅くまで開いているスーパーやコンビニがあれば完璧!」
これだけ条件を揃えれば、あとはネットで検索して不動産屋に連絡するだけ。そう簡単に考えていた私は、スマートフォンを手に取り、大手の物件検索サイトで条件にチェックを入れていきました。
しかし、画面に表示された検索結果を見た瞬間、私は自分の目を疑うことになります。
「……条件に一致する物件が、1件もない?」
家賃の予算を一般的な一人暮らしの枠に設定していたため、私の理想をすべて満たす部屋など、東京の広いマップのどこにも存在しなかったのです。
焦って家賃の条件を少し上げてみても、出てくるのは予算を遥かにオーバーした高級マンションばかり。逆に予算を死守しようとすると、今度は駅から徒歩20分以上も離れた築古の木造アパートや、お風呂とトイレが一緒になった狭いワンルームなど、最初に描いていたキラキラした東京生活とは程遠い物件ばかりが画面を埋め尽くしました。
沖縄から東京という大移動を控えている私にとって、事前に何度も現地へ足を運んで内見を重ねることは、時間的にも金銭的にも不可能です。だからこそ、ネット上の情報だけで完璧な部屋を見つけなければならないというプレッシャーが、余計に焦りを生んでいました。
「駅が近い部屋は、どうしてこんなに家賃が高いんだろう」 「築年数を妥協したら、本当に防音性は大丈夫なのかな」
調べれば調べるほど、ネットの画面越しに突きつけられる厳しい現実と、自分の理想との間の巨大なギャップに、すっかり頭を抱えてしまいました。
毎日、夜遅くまで複数の物件サイトを何時間もスクロールし続け、ブルーライトで目が痛くなる頃には、どの物件を見ても同じに見えてくる始末。
条件を詰め込みすぎたせいで、自分が本当はどんな部屋に住み、どんな毎日を送りたかったのか、完全に目的を見失って迷子になってしまったのです。